CreativeNews

遠距離マーケをやらないことが、結果として遠距離を強くする

migimi

Creative Jump

遠距離マーケをやらないことが、結果として遠距離を強くする

前回、私は
近距離・中距離・遠距離の関係は、一方通行ではなく循環になりうる
ということを書きました。

遠距離は、ただ近距離に人を送るためだけのものではない。
ときには、近距離の信頼や営業力を強くする武器にもなります。

たとえば、プレスリリースのような遠距離施策で掲載実績をつくる。
その実績が、サイトや提案資料、商談の場で効く。
すると近距離の接点が強くなる。

そんなふうに、
遠距離が近距離を強くする
という流れがあります。

でも逆に、
近距離が遠距離を強くする
という流れもあります。

むしろ、こちらのほうがブランドの本質に近いこともあるかもしれません。

今回は、その話です。

遠距離をやらない店ほど、なぜか広がっていくことがある

マーケティングの話をしていると、どうしても「どう広げるか」が中心になります。

SNSをやる。
広告を打つ。
Googleマップを整える。
グルメサイトに載せる。
プレスリリースを出す。

もちろん、どれも大事です。

でも一方で、ずっと気になっていることがあります。

それは、
遠距離マーケティングをあえてやらない店ほど、なぜか遠距離がものすごく強いことがある
ということです。

SNSをやらない。
広告も打たない。
Googleマップやグルメサイトにあえて載せない。
一見さんお断り。
会員制。
紹介制。

こういう店は、一見すると不利に見えます。

新規が来にくそうだし、認知も広がりにくそうです。

でも、実際にはそういう店が強いブランドになっていることがある。
しかもおもしろいのは、遠距離を捨てているはずなのに、結果として遠くにまで名前が広がっていくことです。

この構造は、距離マーケティングで考えるとかなりおもしろいと思っています。

遠距離を閉じると、近距離の濃度が上がる

私はマーケティングを、
近距離・中距離・遠距離
という3つの距離で整理して考えています。

近距離は、来店後や接客中、商談中のような近い接点。
中距離は、地域や生活圏の中で届く接点。
遠距離は、SNSや広告、PRのように広く認知を取りにいく接点です。

この考え方で見ると、「遠距離をやらない店」が強い理由も見えてきます。

遠距離をやらないということは、
誰にでも開いている状態をやめる
ということでもあります。

入口を狭くする。
来る人を選ぶ。
広く知られることを目的にしない。

すると何が起きるか。

近距離の濃度が上がるんです。

来る人の解像度が上がる。
お店側も、お客さん側も、関係が濃くなる。
「たまたま来た人」ではなく、「その店を選んで来た人」が増える。
その結果、体験の質が上がる。

遠距離を開いていると、裾野は広がります。
でもそのぶん、接点はどうしても薄まりやすい。

一方で、遠距離を閉じると、数は減るかもしれない。
でも、関係の密度は上がる。

そして、その密度がブランドの核になることがあります。

強い近距離は、勝手に遠距離へ変わっていく

ここで起きるのが、循環です。

遠距離を閉じる。
すると近距離が強くなる。
その強い近距離が口コミや評判を生む。
その口コミや評判が広がる。
結果として、遠距離につながっていく。

つまり、

遠距離をやらないことが、結果として遠距離を強くする

という逆説が起きるんです。

これは前回書いた、
遠距離が近距離を強くする
という流れの、ちょうど逆側です。

前回は、
遠距離の発信が近距離の信頼を強くする
という話でした。

今回は、
近距離の濃い体験が遠距離の評判を生む
という話です。

この両方があるから、距離マーケティングは一直線ではなく、循環で考えられるんだと思います。

「知る人ぞ知る店」は、偶然そうなっているわけではない

よく、「知る人ぞ知る店」という言い方があります。

でもあれって、偶然そうなっているわけではなく、
かなり意図的につくられていることも多いと思います。

SNSをやらない。
広告を打たない。
簡単には見つけられない。
簡単には入れない。
紹介がないと行けない。

こういう設計をすると、そこには意味が生まれます。

「簡単にはたどり着けない」
「知っている人だけが知っている」
「選ばれた人が来る場所」

この構造自体が、ブランドになる。

もちろん、ただ閉じればいいわけではありません。

不親切なだけなら、人は離れます。
でも、体験の質や世界観、関係性の濃さが伴っていると、その閉じ方は排除ではなく価値になります。

そして、その価値を体験した人は、人に話したくなる。

こうして、近距離の濃い体験が外へ広がり、遠距離になっていく。

つまり、
近距離が遠距離を生む
という循環が起きているわけです。

本当にすごいのは、「遠距離を使う場所」と「閉じる場所」を設計している例

ここまで書いてきたのは、「遠距離をやらないことで近距離が強くなる」という話です。

でも実際には、もっとおもしろい例もあります。

たとえば、完全会員制・住所非公開のパフェバー Remake easy のような事例です。

クラウドファンディングで会員権を買った人だけが入れる。
つまり、オープン後は会員制で近距離を濃くしていく設計になっている。

でもその一方で、オープン前にはクラウドファンディングという形で遠距離をうまく使っている。

広く話題をつくる。
世界観に共感する人を集める。
オープン前の段階で、熱量の高い人を集める。

そしてオープン後は、誰にでも開き続けるのではなく、会員制という形で近距離の濃さを守る。

これはかなりすごいです。

単に遠距離を捨てているわけではない。
でも、近距離だけに閉じているわけでもない。

最初だけ遠距離を使い、その後は近距離を濃くする。
そして、その濃い近距離がまた口コミや評判になって広がっていく。

これはまさに、距離マーケティングを循環で設計している例だと思います。

距離マーケティングは、「全部やること」ではない

ここで大事なのは、距離マーケティングとは
近距離・中距離・遠距離を全部まんべんなくやることではない
ということです。

本質はむしろ逆で、

どの距離を開き、どの距離を閉じ、どの距離を濃くするかを考えること

だと思っています。

遠距離をあえて閉じることで、近距離を強くすることもある。
最初だけ遠距離を使って、あとは近距離を守ることもある。
遠距離でつくった実績が、近距離の信頼を強くすることもある。
近距離の濃い体験が、結果として遠距離へ広がることもある。

この行き来がある。

だから距離マーケティングは、
「どの施策をやるか」の話ではなく、
接点をどの距離で、どう循環させるか
の話なんだと思います。

遠距離をやらないことは、遠距離を諦めることではない

最後に、ここはかなり大事です。

遠距離マーケをやらない、というのは、
必ずしも「遠距離を完全に諦める」ということではありません。

むしろ本質は逆で、

自分で遠距離を取りに行かないことで、近距離を強める。
その結果、強い近距離が自然に遠距離へ変わっていく。

という設計です。

これはすごくおもしろい逆説です。

遠距離を増やしたいなら、
遠距離施策を増やすことだけが正解ではない。

ときには、遠距離をあえて閉じることが、
いちばん強い遠距離につながることもある。

そして、ときには Remake easy のように、
遠距離をゼロにするのではなく、
最初にだけ使い、その後は近距離の濃さを守る
という設計もある。

前回は、
遠距離が近距離を強くする
という循環を書きました。

今回は、
近距離が遠距離を強くする
という循環を書きました。

この両方が見えてくると、マーケティングは「広げるか、閉じるか」という単純な話ではなくなります。

どの距離を、どの順番で、どの濃さで設計するか。
そして、それがどこへ返っていくのか。

クリエイティブジャンプでは、こうした顧客との接点を距離で捉える考え方を、距離マーケティングと呼んでいます。

LINE公式アカウントなど来店後・接客中の接点を「近距離」。
ポスティングや商圏内配布、地域との関係づくりのように生活圏で届く接点を「中距離」。
SNSや広告、PRなど広く認知を獲得する接点を「遠距離」。

大事なのは、全部をやることではない。
そのお店にとって、
どの距離を開き、どの距離を閉じ、どの距離を濃くするか
を考えることです。

強い店は、ただ広がっているわけじゃない。
広がり方まで、設計している。

そんなことを考えています。

Written By

migimi

株式会社クリエイティブジャンプのメンバー。マーケティングとクリエイティブの最前線で活動しています。

CreativeNews

Creative Jumpが運営する、マーケティング・集客・広告・採用広報の実践知を発信するメディア。

距離マーケ

カテゴリ

Info